「朝起きた瞬間から、メガネを探さずに部屋の時計がはっきり見えたら」「コンタクトレンズのつけ外しや、夕方の目の乾きから解放されたい」と考えたとき、選択肢として注目されているのが「ICL(アイシーエル)」です。
ICLについて調べ始めると、「目の中にコンタクトレンズを入れるって本当?」「手術中に痛みはあるのかな」「レーシックと何が違うの?」「一度入れたら一生取り出せないの?費用に見合う効果はある?」など、さまざまな疑問や不安が湧いてくるかもしれません。また、30代後半から50代の方であれば「将来、老眼や白内障になったらどうなるんだろう」という懸念を持たれることもあります。
結論からお伝えすると、ICLは目の中に「眼内コンタクトレンズ」と呼ばれる小さなレンズを移植し、近視や乱視を根本から矯正する手術です。角膜を削るレーシックとは異なり、万が一の際にはレンズを取り出せる柔軟性があります。強度近視の方でも視力矯正の候補になりやすい点が大きな特徴です。
ただし、ICLは目の内部を処置する「眼内手術」であるため、感染症や眼圧の上昇、早期の白内障といったリスクがゼロではありません。費用も保険適用外の自由診療となるため高額になりやすく、すべての人に無条件でおすすめできるわけではありません。
この記事では、ICLの基本的な仕組みから、費用相場、メリット・デメリット、手術の流れ、将来の目への影響まで、医療の知識がない方にもわかりやすく整理しました。読み進めていただくことで、ICLの全体像と注意点がしっかり理解できるようになります。
結論|ICLとは目の中にレンズを入れる視力矯正手術

まずはICLがどのような治療なのか、概要を押さえていきましょう。
ICLは近視や乱視を矯正する眼内コンタクトレンズ
ICLの正式名称は「Implantable Collamer Lens(インプランタブル・コラマー・レンズ)」といい、日本語では「有水晶体眼内レンズ挿入術」や「眼内コンタクトレンズ」と呼ばれます。
日常で使うコンタクトレンズは「目の表面(角膜)」の上に乗せて視力を補正しますが、ICLは「目の内部」に直接レンズを配置します。近視や乱視によってズレてしまった光のピントを、目の中に入れたレンズの度数によって正しく網膜へ合わせる仕組みです。
角膜を基本的に削らずに視力を矯正する
視力矯正手術として有名なレーシックは、レーザーを使って角膜(黒目の表面にある透明な膜)を削り、そのカーブを変えることでピントを調整します。
一方、ICLは角膜を削る必要が基本的にありません。角膜の厚みを変えずに視力を出せるため、レーシックでは「角膜が薄くて削れない」「近視が強すぎて削る量が多すぎる」と判定された方でも、治療の選択肢に入ることがあります。ただし、ICLにも目の中の形状による制限があるため、強度近視であれば誰でも受けられるというわけではありません。
入れたレンズは外から見えず、毎日の手入れも不要
ICLで挿入するレンズは、目の奥の薄暗いスペースに配置されるため、鏡で見ても、他人から覗き込まれても外からはほとんど見えません。
また、一度目の中に入れたレンズは数年〜数十年とそのまま保持できます。通常のコンタクトレンズのように毎晩外して洗浄したり、保存液でケアしたりする手間は一切ありません。ただし、手入れが不要だからといって放置してよいわけではなく、目の健康とレンズの状態を確認するための定期検診に通う必要があります。
すべての人が受けられるわけではない
「視力を良くしたい」と希望すれば誰もがICLを受けられるわけではありません。安全に手術を行うためには、精密検査で以下の項目を慎重に確認する必要があります。
- 目の中にレンズを安全に収める空間(前房の深さ)があるか
- 角膜の透明度を保つ「角膜内皮細胞」の数が十分にあるか
- 角膜や水晶体、網膜に病気がないか
- 近視や乱視の度数がここ1年ほど安定しているか
- 白内障や緑内障が進行していないか
- 全身状態や年齢(一般的に18歳以上で度数が安定していることが条件)
「視力がかなり悪いから自分はICLだ」とご自身だけで判断することはできません。実際に適応するかどうかは、眼科で専用の機器を使った精密検査を受けて確認します。
ICLの仕組みと使用するレンズ

ICLが目のどこに配置され、どのような素材で作られているのか、構造を詳しく見ていきます。
ICLレンズは目のどこに入る?
人間の目は、光を取り込む一番表面の「角膜」、目に入る光の量を調節する茶目の部分である「虹彩(こうさい)」、そしてピントを合わせる透明なレンズである「水晶体(すいしょうたい)」などが順番に並んでいます。
ICLのレンズが入る場所は、この「虹彩」の後ろ側と、「水晶体」のすぐ手前にあるわずかな隙間(後房:こうぼう)です。
虹彩の裏側にすっぽり収まるため、目を開けていてもレンズが目立つことはなく、まばたきをした際に異物感を生じることも基本的にありません。
ICLの素材と特徴
ICLに使われているレンズは「コラマー(Collamer)」と呼ばれる独自の合成素材で作られています。
コラマーはコラーゲンを含んだ非常に柔らかくしなやかな素材です。生体適合性が高く、目の中に入れても拒絶反応が起きにくい特徴を持っています。非常に小さく折りたたむことができるため、目にはわずか2〜3mm程度の小さな切れ目を入れるだけで挿入が可能です。
ホールICLとは?
現在広く使われているICLは、レンズの中央に直径1mmほどの小さな穴があいた「ホールICL(Hole ICL)」というタイプが主流です。
以前の旧型レンズでは、目の中を循環する液体(房水:ぼうすい)の流れを滞らせないために、手術前にレーザーで虹彩に小さな穴をあける処置が必要でした。現在のホールICLは、レンズ自体にあいた穴を通って房水が自然に流れるため、事前処置が不要になり、患者様の負担や手術リスクが軽減されています。
近視用ICLと乱視用ICLの違い
ICLには「近視用」と「乱視用(トーリックICL)」の2種類があります。
乱視がある方は、光が目に入ったときにピントが1点に結ばれず、縦や横にブレて見えます。乱視用ICLは、近視の度数だけでなく乱視の方向(乱視軸)に合わせて微調整されたレンズを使用します。
ただし、軽度の乱視であれば近視用レンズだけで十分に視力が改善することもあります。乱視用レンズを使用すべきかどうかも、事前の検査データをもとに医師が判断します。
ICLのメリット

ICLが選ばれている主なメリットを6つのポイントに整理しました。
強度近視でも選択肢になりやすい
近視が強い方(強度近視)がレーシックを受ける場合、ピントを合わせるために角膜を深く削る必要があります。削る量が多くなりすぎると、術後に角膜の強度が低下する懸念から、手術を受けられないケースが多々ありました。
ICLはレンズの度数を変えることで強い近視に対応するため、角膜を削る厚みに依存しません。これまで視力矯正をあきらめていた強度近視の方にとって、有力な選択肢となります。
角膜が薄い人でも適応になることがある
元々の角膜の厚さには個人差があります。近視がそれほど強くなくても、生まれつき角膜が薄い方はレーシックの適応外となることがあります。
ICLであれば角膜の厚みを残したまま治療が行えるため、レーシック不可と診断された方でも手術を受けられる可能性があります。
角膜を基本的に削らない
角膜の形状を大きく変更しないため、角膜本来の光学的特性が保たれやすいというメリットがあります。削らないことで、術後の見え方の質(コントラスト感度など)が高く保たれやすいと評価されています。
ただし、「角膜を削らない=100%安全」という意味ではありません。目の内部にアプローチする手術であるため、それ固有の注意点が存在します。
ドライアイへの影響が比較的少ない
レーシックでは角膜の表面を切開してフラップ(フタ)を作る際、角膜に通っている神経の一部を切断します。これにより一時的に涙の分泌指令が減り、強い乾燥感が生じることがあります。
ICLは角膜の端を数ミリ切開するだけで済むため、角膜神経へのダメージが非常に少なく、術後にドライアイが悪化するリスクが相対的に低いとされています。
レンズの摘出や交換を検討できる
ICLの大きな特徴の一つが「可逆性(元に戻せる可能性)」です。
万が一、術後に度数が大きく変化してしまった場合や、将来的に白内障などの別の目の病気にかかった場合、あるいはどうしても見え方が体に合わないと感じた場合には、目の中からレンズを取り出したり、別の度数のレンズへ入れ替えたりする検討が可能です。
【注意】簡単に取り外せるわけではありません
「取り外せる」と言っても、通常のコンタクトレンズのように指で簡単に出し入れできるわけではありません。取り外す際も目を切開する眼内手術が必要となり、相応のリスクが伴います。
コンタクトレンズの手入れから解放される可能性がある
日常生活における利便性の向上は、非常に大きなメリットです。
- 朝のストレス軽減:メガネを探すことなく、起きた瞬間から部屋の様子が見える
- 手間と時間の削減:毎晩のレンズ外しや洗浄、保存液の補充が不要になる
- 乾燥やゴロゴロ感の軽減:夕方にコンタクトレンズが乾いて目が痛くなるトラブルが減る
- お出かけの荷物削減:旅行や出張時にケア用品を持ち運ぶ必要がなくなる
- 緊急時の安心感:夜間の地震や災害時にも、すぐに裸眼で状況を把握して行動できる
ただし、加齢による見え方の変化などによって、将来的に一時的なメガネ(老眼鏡など)が必要になる場面が出てくる可能性は残ります。
ICLのデメリットとリスク

満足度の高いICLですが、メリットだけに目を奪われるのは危険です。手術である以上、必ずデメリットやリスクが存在します。
自由診療のため費用が高い
ICL手術は、病気やケガの治療ではないため公的医療保険が使えません。全額自己負担となる「自由診療」です。
使用するレンズが個人の目に合わせて精密に製造されるオーダーメイド医療機器であることや、高度な技術が必要とされることから、両眼で数十万円という高額な費用がかかります。
感染症や眼圧上昇などのリスクがある
ICLは目の内側に器具を入れてレンズを配置する「眼内手術」です。そのため、以下のような合併症のリスクがゼロではありません。
- 眼内感染症(細菌性眼内炎):手術時に目の中に細菌が入り込んで炎症を起こす病気です。発生頻度は数千件に1件程度と極めて稀ですが、万が一発症した場合は視力低下につながる恐れがあり、迅速な治療が必要です。
- 眼圧上昇・緑内障:レンズの位置や目の中の水の流れの変化によって眼圧(目の硬さ)が上がり、痛みがでたり視野に影響したりすることがあります。
- 角膜内皮細胞の減少:レンズが角膜の裏側にある大切な細胞(角膜内皮細胞)に接触し続けると、細胞が減ってしまうことがあります。
これらのリスクを早期に発見・対処するために、指定された定期検診を必ず受ける必要があります。
白内障が起こる可能性がある
ICLレンズは水晶体のすぐ近くに配置されます。そのため、レンズと水晶体が接触したり、房水の循環が滞ったりすることで、水晶体が白く濁る「白内障」が通常よりも早い年齢で進行するリスクが報告されています。
ホールICLの登場によりこのリスクは大幅に低減されましたが、可能性が完全に消えたわけではありません。
ハロー・グレアを感じることがある
術後、暗い場所で光を見た際に特別な見え方が発生することがあります。
- ハロー:夜間の街灯や車のライトの周りに、光の輪がぽわっと広がって見える現象
- グレア:光がギラギラと眩しく放射状に伸びて刺さるように見える現象
また、ホールICL特有の症状として、レンズ中央の穴に光が反射して「光の輪っか(リング)」が見えることもあります。多くの場合は数ヶ月で脳が慣れて気にならなくなっていきますが、夜間のドライブが多い仕事の方などは事前に知っておく必要があります。
レンズのサイズや度数が合わない場合がある
人間の目の内部構造は非常に複雑です。事前の精密検査に基づいてレンズを選定しますが、実際に目に入れてみると「レンズが少し浮き上がりすぎている(高すぎる)」「水晶体に近すぎる(低すぎる)」といったサイズの不適合が起きることがあります。
また、術後の見え方の好みに個人差があるため、計算上の度数と実際の感覚にズレが生じる場合もあります。
再手術やレンズ交換が必要になることがある
サイズや度数の不適合、あるいは乱視用レンズの位置が目の中で回転してズレてしまった場合は、レンズの位置を整える手術や、別のサイズ・度数のレンズに交換する再手術が必要になります。
「一度の手術ですべてが完璧に終わらないケースもある」ということは、あらかじめ心づもりをしておくことが大切です。
術後も定期検診が必要
ICLは「手術が終わったら通院終了」ではありません。
目の中でレンズが正しい位置にあるか、眼圧に異常がないか、角膜の内皮細胞が減っていないか、水晶体に濁りが出ていないかをチェックするため、術後翌日、1週間後、1か月後、3か月後、半年後、1年後…と長期にわたって定期検診に通う義務が生じます。
ICL手術の流れ

実際にICLを受ける際の手順を、初回相談から術後まで順を追って説明します。
初診・カウンセリング
まずは眼科を受診し、現在の目の状態や視力の悩みを相談します。
この段階では、普段のメガネ・コンタクトの度数、お仕事の内容(パソコン作業が多い、夜間運転をするなど)、趣味やスポーツの有無、どれくらいの裸眼視力を希望しているかなどを医師やスタッフへ伝えます。
コンタクトレンズの装用を中止する
適応検査を受ける前には、普段使っているコンタクトレンズの使用を一定期間ストップする必要があります。コンタクトレンズをつけ続けていると、角膜の形が押されて一時的に変形し、正確な検査データが取れなくなるためです。
中止期間の目安はレンズの種類によって異なります(ソフトレンズで数日〜1週間程度、ハードレンズで2〜3週間程度など)。医療機関からの指示を守り、検査まではメガネで過ごします。
適応検査を受ける
ICLが受けられる目かどうかを調べるために、時間をかけて精密検査を行います。
- 屈折・視力検査:近視や乱視の正確な度数を測定する
- 角膜形状・厚み測定:角膜のカーブや厚さに異常がないか調べる
- 前房深度測定:目の中にレンズを入れるスペース(深さ)が十分あるか調べる
- 角膜内皮細胞測定:角膜の透明度を保つ細胞の密度を数える
- 眼圧測定:目の硬さを調べる
- 眼底検査:網膜や神経に病気がないか奥まで調べる
レンズの度数とサイズを決める
検査データをもとに、医師が挿入するレンズの度数とサイズ(S・M・Lなど)を決定します。
度数やサイズが決まったらレンズを発注します。国内に在庫があるレンズであれば数日〜1週間程度で届きますが、度数が強い場合や乱視用(トーリック)の特注レンズになる場合は、海外の製造元から取り寄せるため数週間〜数ヶ月かかることもあります。
手術前の準備を行う
手術日の数日前から、目の中の細菌を減らすための抗菌点眼薬(目薬)を指示通りにさし始めます。当日は指定された服装でクリニックへ向かい、目の周りのメイクや整髪料は控えます。手術当日はご自身での車の運転はできません。
手術当日の流れ
当日の院内での一般的な過ごし方は以下の通りです。
院内に滞在する時間は、準備や休憩を含めて2〜3時間程度となります。
翌日以降の定期検診
手術翌日は、目の中に異常がないか確認するために必ず受診します。その後も指定されたスケジュール(1週間後、1か月後など)に合わせて通院し、段階的に目の安全を確認していきます。
ICL手術は痛い?手術中と術後の見え方

「目に手術をする」と聞くと、誰もが「痛そう」「怖い」と感じるものです。実際の感覚について解説します。
手術では点眼麻酔を使用する
ICL手術では、注射ではなく目薬による「点眼麻酔」を使用します。
麻酔が効いているため、手術中に鋭い痛みを直接感じることは基本的にありません。ただし、目を押されるような圧迫感や、水で洗われる感覚、器具が触れる感覚、顕微鏡の光の眩しさなどを感じることがあります。「痛い」というよりは「不快感や押される感じがある」と表現する方が多いです。
手術中は光や影が見えることがある
手術中、医療器具が直接迫ってくるのが見えるのではないかと不安になるかもしれませんが、はっきりとした形が見えるわけではありません。
顕微鏡の眩しい光を見つめている状態になるため、周囲はぼんやりと光って見えたり、水の中から上を見上げているように光や影がゆらゆら動いて見えたりします。
まばたきや目の動きが心配な場合
「途中でまばたきをしてしまったらどうしよう」「恐怖で目が動いてしまったらどうなるの」という疑問もよく聞かれます。
手術中は「開眼器(かいがんき)」という専用の器具を使ってまぶたを固定するため、ご自身の意思でまばたきをしてしまう心配はありません。また、光を静かに見つめるよう指示されますが、少し目が動いてしまっても医師が状況に合わせて処置を行います。不安が強い場合は、事前に医師へ伝えておくことで配慮を受けられます。
手術直後はかすんで見えることがある
レンズが入った瞬間から世界がクリアに見えるわけではありません。手術直後は、麻酔の影響や瞳孔が開いていること、手術時の水が入っていることなどが原因で、全体に白くかすんだり、眩しく感じたり、目がゴロゴロしたりします。
帰宅して数時間〜翌朝にかけて麻酔や瞳孔が元に戻るにつれ、徐々にクリアな視界へと変化していきます。
視力が安定するまでの期間
多くの人が手術の翌朝には視力が出ているのを実感します。しかし、目の傷口が完全に治り、見え方や視力が本当の意味で落ち着くまでには、数週間から1か月程度かかるのが一般的です。
回復のスピードには個人差があるため、「知人は翌日からバッチリ見えたのに自分は少しぼやける」と焦らず、主治医と経過を確認していくことが大切です。
夜間のハロー・グレア
手術直後は、夜間の街灯や車のライトを見たときに光の輪(ハロー)や眩しさ(グレア)を強く感じやすい時期です。多くの場合は数か月かけて脳が順応し、気にならなくなっていきます。
ICLとレーシック・コンタクトレンズの違い

視力矯正にはいくつかの手段があります。それぞれの違いを表で比較してみましょう。
ICLとレーシックの違い
大きな違いは「角膜を削るか」「目の中にレンズを入れるか」という点です。
| 比較項目 | ICL(有水晶体眼内レンズ) | レーシック(LASIK) |
| 矯正の仕組み | 目の中に専用レンズを挿入 | レーザーで角膜を削り形状を変える |
| 角膜への処置 | 削らない(数ミリ切開のみ) | 削る(角膜組織を不可逆的に除去) |
| 強度近視への対応 | 幅広く対応可能 | 削る量が多くなるため適応外になりやすい |
| ドライアイの影響 | 比較的少ない | 術後に一時的に強く出やすい |
| 摘出・元に戻すこと | 可能(再手術が必要) | 不可(削った角膜は戻らない) |
| 費用相場(両眼) | 約40万〜80万円前後(高価) | 約20万〜40万円前後(抑えめ) |
| 主なリスク | 眼内感染症、眼圧上昇、白内障 | ドライアイ、フラップトラブル、角膜拡張症 |
| 術後検診 | 長期的な経過観察が必要 | 術後一定期間の経過観察 |
ICLと通常のコンタクトレンズの違い
ICLと日常使いのコンタクトレンズは、利便性とリスクの所在が大きく異なります。
通常のコンタクトレンズは「手術を受けずに済む」「度数変更が手軽」というメリットがある反面、毎日の着脱・洗顔ケアが必要で、長時間装用による角膜の酸素不足や感染症リスクと常に隣り合わせです。
ICLは「一度受けてしまえば毎日の手入れから解放される」という快適さがある反面、初回に高い費用がかかり、手術そのもののリスクを伴います。
どの方法が優れているかではなく、自分に合うかで選ぶ
それぞれの視力矯正方法には、一長一短があります。
| 方法 | 手術 | 毎日の手入れ | 初期費用 | 継続費用 | 主な特徴・向いている人 |
| ICL | あり | 不要 | 高い | ほとんど不要 | 強度近視、角膜が薄い、ドライアイ、費用より質重視 |
| レーシック | あり | 不要 | 中程度 | ほとんど不要 | 軽度〜中等度近視、角膜が厚い、初期費用を抑えたい |
| コンタクト | なし | 必要 | 低い | ずっとかかる | 手術が怖い、日によって度数を変えたい、たまにしか使わない |
| メガネ | なし | 不要 | 低い〜中 | 破損時のみ | 目に何も入れたくない、手軽さを最優先したい |
どれか一つの方法が絶対的に優れているわけではありません。ご自身の目の状態、価値観、予算、生活習慣に合わせてベストな選択をすることが重要です。
ICLの費用と保険適用

検討する上で避けて通れないのがお金の話です。費用構造と活用できる制度を解説します。
ICLは自由診療
ICL手術は健康保険が適用されない自由診療です。そのため、手術費用や関連する検査費用は全額自己負担となります。
また、医療費が高額になった際に自己負担額を抑える「高額療養費制度」も、保険診療ではないICLには原則として適用されません。
近視用と乱視用で費用が異なる場合がある
ICLの費用相場は、両眼で約40万円〜80万円程度と幅があります。
金額が変動する主な理由は「レンズの種類」です。乱視がない方向けの近視用レンズに比べ、乱視用(トーリック)レンズは特注品となるため、数万円〜10万円ほど高く設定されているクリニックが多く見られます。また、度数が極めて強い場合にも追加料金が発生することがあります。
料金に含まれる範囲を確認する
提示されている金額だけで比較せず、その中に何が含まれているかを確認することがトラブル防止になります。
| チェック項目 | 内訳の例(確認すべきポイント) |
| 事前検査費用 | 適応検査や前眼部解析などの検査代が含まれているか |
| レンズ本体代 | 近視用・乱視用の差額はあるか |
| 手術・麻酔代 | 手術手技料や麻酔の目薬代が含まれているか |
| 薬代 | 術前・術後に処方される点眼薬や内服薬の費用 |
| 術後検診費用 | 術後〇ヶ月分(または1年分)の検診代が含まれているか |
| 保証内容 | 度数変更やサイズ交換、再手術時の費用サポートがあるか |
医療費控除の対象になる可能性がある
ICL手術は、確定申告を行うことで「医療費控除」の対象になる場合があります。
医療費控除とは、1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が一定額(一般的に10万円)を超えた場合、納めた所得税や住民税の一部が還付・軽減される制度です。
- 税金がそのまま全額戻ってくるわけではありません(所得に応じた税率分が軽減されます)。
- 確定申告の際には、クリニックが発行した領収書が必要となりますので大切に保管してください。
最新の制度条件については、国税庁のウェブサイトや最寄りの税務署で確認しましょう。
民間保険の手術給付金は契約による
ご自身が加入している民間の生命保険や医療保険から「手術給付金」が支払われるかどうかは、保険会社や加入している商品の約款によって完全に異なります。
かつては給付対象となっていた商品も多く存在しましたが、現在は対象外となっている契約も増えています。契約している保険会社の担当者やカスタマーセンターへ、「有水晶体眼内レンズ挿入術」が給付対象になるかどうか事前に問い合わせることを強く推奨します。
ICLが向いている人・慎重に検討した方がよい人

ご自身の状況と照らし合わせるための基準を整理しました。
ICLが向いている可能性がある人
- 強度近視や強い乱視があり、メガネのレンズが重くて不便を感じている
- 角膜が薄い、または近視が強すぎてレーシック不可と判断された
- ドライアイが酷く、コンタクトレンズをつけるのが辛い
- スポーツやアウトドア、旅行を裸眼で快適に楽しみたい
- 角膜を削って不可逆な変化を加えることに心理的抵抗がある
- 術後も決められた定期検診へしっかり通う意思がある
ICLを慎重に検討した方がよい人
- 直近1年で近視の度数が大きく進んでおり、視力が安定していない
- 白内障、緑内障、重度の糖尿病網膜症など、他の目の病気がある
- 40代後半以降で、すでに老眼症状が強く現れている
- 「手術を受ければ一生1.5の視力が完璧に保てる」と過度な期待をしている
- 手術後の定期検診に通う時間や余裕を作れない
- 再手術や合併症のリスクを受け入れられない
適応は精密検査で判断する
年齢や「近視が強い」という自己申告だけで受診可能かを決めることはできません。最終的には、眼科で目の深さや細胞の数を一つひとつ数値化して判断します。
ICLで後悔しないためのクリニック選び

後悔のない選択をするために、信頼できる医療機関を見極めるポイントを紹介します。
ICL認定医が在籍しているか
ICL手術を行う医師には、レンズメーカー(ライセンス提供元)による認定制度が存在します。
「ICL認定医」の資格を有しているかどうかは、一定の知識と手技の講習を修了している一つの指標となります。ただし資格の有無だけでなく、どのような姿勢で診察に向き合っているかも重要です。
適応検査の内容が十分か
単に視力を測るだけでなく、角膜の内皮細胞数、前房の深さ、網膜の状態まで時間をかけて慎重に調べてくれるかを確認しましょう。
本当に良いクリニックは、「手術をしてもらえる人」を探す検査ではなく、「手術をしてはいけない人(リスクが高い人)」を正しく見つけ出すために検査を行います。
診察・手術・術後検診を誰が担当するか
カウンセリング、手術、そして術後の経過観察をどのような体制で行っているかを確認しましょう。
同じ医師が一貫して担当してくれる環境であれば、術前の細かな希望や目の癖、術後の微小な変化を把握してもらいやすく、安心感につながります。
メリットだけでなくリスクも説明するか
良いことばかりをアピールし、感染症、ハロー・グレア、白内障、再手術などのリスクについて説明を濁すクリニックは避けるべきです。デメリットや懸念点を包み隠さず伝え、質問に誠実に答えてくれる医師を選びましょう。
レンズ交換や再手術への対応を確認する
万が一度数が合わなかった場合や、レンズが回転してしまった場合に、どのような保証制度があるかを事前に書面等で確認してください。「術後〇年以内は保証期間内として無料で再調整に応じる」などのルールが明示されていると安心です。
費用と保証範囲が明確か
ウェブサイトに掲載されている基本料金だけでなく、適応検査代、術後の薬代、定期検診代などがすべて含まれた「総額」を提示してくれるかを確認してください。
長期的に通院しやすいか
ICLは術後何年にもわたって検診を受ける可能性があります。自宅や職場から通いやすい場所にあるか、休診日や診療時間が自分の生活スタイルに合っているかも大切な比較要素です。
大沢眼科のICL治療

東京都池袋に位置する「大沢眼科」では、患者様の目の安全性と満足度を最優先に考えた視力矯正医療に取り組んでいます。
ICL認定医が適応を判断
当院では、ICLの専門知識とトレーニングを受けたICL認定医である院長が、患者様の適応判断を行います。医学的根拠に基づき、無理な手術のお勧めは一切いたしません。
院長が手術と術後フォローを担当
初診時のカウンセリングや適応検査の判断から、手術執刀、そして術後の定期検診に至るまで、すべてのプロセスを院長が一貫して担当いたします。
担当医が途中で変わることがないため、患者様のご希望や目の細かな状態の変化を正確に把握した上で、きめ細やかなサポートを提供することが可能です。
近視・乱視の状態を詳しく検査
当院の適応検査では、視力や屈折度数の測定はもちろんのこと、最新の検査機器を用いて前房深度(目の中の広さ)、角膜内皮細胞数、眼圧、水晶体の透明度、網膜の状態などを多角的に調べ上げます。
検査の結果、もし目の中のスペースが狭いなどICLのリスクが高いと判断された場合は、適していない理由を明確にお伝えし、手術を中止・断念するよう誠実にご提案します。
池袋で定期検診に通いやすい
ICLで最も重要なことの一つが「術後の定期通院」です。
大沢眼科は池袋駅からアクセスしやすい立地にあり、お仕事帰りや休日を利用して無理なく通院を続けていただける環境を整えています。手術翌日や1週間後といった頻繁な通院時期でも、負担を最小限に抑えられます。
費用や術後サポートを事前に説明
当院では、患者様が費用面で不安を抱えたまま手術に進むことがないよう、事前に総額料金と保証範囲をわかりやすく提示いたします。万が一のレンズサイズ交換や再調整に関する規定についても、事前に丁寧にご説明いたします。
ICLに関するよくある質問

患者様から多く寄せられる質問に一問一答形式でお答えします。
ICLは何年使えますか?
原則として半永久的に使用可能です。
レンズ素材であるコラマーは生体適合性が非常に高く、目の中で劣化したり変質したりすることがほとんどありません。そのため、トラブルがなければ取り替えることなく使い続けることができます。
ICLは一生入れたままで大丈夫ですか?
特に問題が起きなければ一生入れたままで過ごせます。
ただし、将来白内障になった場合や、加齢とともに目の中の構造が変化して眼圧上昇などの問題が生じた場合は、取り出す必要が出てくることがあります。
ICLレンズは外から見えますか?
外からはほとんど見えません。
レンズは茶目の後ろ側(虹彩の後ろ)に入るため、鏡で自分の目を見ても、他人が至近距離から覗き込んでもレンズの存在に気づくことは基本的にありません。
ICL手術は痛いですか?
麻酔の目薬を使用するため、鋭い痛みはほとんどありません。
ただし、手術中に目を押されるような圧迫感や、水で洗われる感じ、眩しさなどを感じることがあります。痛みの感じ方には個人差があります。
手術中に目を動かしても大丈夫ですか?
多少動いてしまっても医師が対応しますが、できるだけ固定された光を見つめます。
まぶたは専用の器具で固定されるため、まばたきの心配はありません。万が一目が動いた場合でも、医師が適切に処置を進めますのでご安心ください。
ICLで乱視も矯正できますか?
乱視用ICL(トーリックレンズ)を使用することで同時矯正が可能です。
乱視の程度や向きを精密検査で測定し、個人の目に合わせた乱視用レンズを特注して手術を行います。
ICLを受けると老眼になりませんか?
ICLを受けても老眼を防ぐことはできません。
老眼は40歳過ぎ頃から誰にでも起こるピント調整機能(水晶体の硬化)の衰えです。近視を遠くにピントが合うよう矯正すると、老眼の年齢になった際に手元が見えづらく感じられるため、必要に応じて老眼鏡を使用することになります。
将来白内障手術は受けられますか?
問題なく受けられます。
白内障になった場合は、まず目の中からICLレンズを取り出し、その後に一般的な白内障手術(濁った水晶体を取り除いて人工眼内レンズを入れる処置)を行います。
ICLは保険適用されますか?
公的医療保険は適用されず、自由診療となります。
全額自己負担となりますが、条件を満たしていれば確定申告による「医療費控除」の対象になります。
手術後に視力が下がることはありますか?
年齢変化や目を酷使する環境によって、再び近視が少し進行する可能性はあります。
ICL自体が元に戻るわけではありませんが、自分の目そのものが成長・変化することで視力が低下することがあります。その場合はメガネの併用やレンズ交換などを医師と相談します。
まとめ|ICLとは角膜を削らずに近視・乱視を矯正する選択肢

ICL(有水晶体眼内レンズ)について、重要なポイントを改めて整理します。
- ICLとは:目の中に専用の小さなレンズを入れ、近視や乱視を矯正する治療法
- 特徴:角膜を削らないため、強度近視や角膜が薄い人でも候補になりやすい
- 手入れ:毎日の着脱や洗浄は不要だが、長期的な定期検診が必要
- 可逆性:万が一の際にはレンズの摘出や交換を検討できる(ただし再手術が必要)
- リスク:自由診療で費用が高く、眼内手術特有の感染症、眼圧上昇、ハロー・グレアなどの可能性がある
- 将来の目:老眼を予防することはできず、白内障になった場合はレンズを取り外して手術を行う
ICLは、毎日のメガネやコンタクトレンズの手間から解放され、高い見え方の質を得られる魅力的な選択肢です。しかし同時に、目の内部にアプローチする医療行為であり、適応条件やリスクが存在します。
「自分は近視が強いからICLが良いはず」「費用が高いから安全なはず」といった自己判断やイメージだけで決めてしまうのはおすすめできません。
ICLがあなたの目に本当に適しているかどうかは、近視の度数だけでなく、角膜の厚み、目の中のスペースの深さ、角膜の内皮細胞数など、専門的なデータを測定して初めて分かります。
視力矯正に興味がある方は、まずは眼科で適応検査を受け、ご自身の目にはどのような選択肢があり、どのようなメリット・リスクがあるのかを専門の医師に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。