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ICL(眼内コンタクトレンズ)手術における乱視矯正について
2025.12.17
ICL(眼内コンタクトレンズ)手術では、近視だけでなく、乱視の矯正も非常に重要です。
乱視が残ると、視力検査の数値が良くても「にじむ」「ぼやける」「すっきりしない」といった違和感が残ることがあります。
当院では、術前検査・切開方法・レンズ選択・軸合わせまで一貫してこだわり、乱視矯正の精度を高めています。
乱視とは?
乱視とは、角膜や水晶体の形がわずかにゆがむことで、
目に入った光が1点に集まらず、ピントが合いにくくなる状態です。
そのため、
* 文字がにじんで見える
* 輪郭がぼやける
* 二重に見えることがある
など、「視力は出ているのに見えにくい」という見え方の質の低下を感じやすくなります。
乱視には2つの種類があります。眼鏡で矯正可能な正乱視と眼鏡では矯正が難しい不正乱視です。
正乱視(ICL(眼内コンタクト)で矯正可能)
正乱視は、角膜や水晶体が
上下・左右・斜めなど、一定の方向にゆがんでいる状態です。
ラグビーボールのように縦横でカーブが異なるイメージで、
* ある方向の線は比較的はっきり見える
* 直角方向の線はぼやけて見える
といった特徴があります。
👉 正乱視は、乱視用ICL(眼内コンタクト)で正確に矯正することが可能です。
不正乱視(ICL(眼内コンタクト)では矯正できません)
不正乱視は、角膜や水晶体に不規則な凹凸や歪みがある状態です。
* ものが何重にもぶれて見える
* にじみや歪みが強い
* 眼鏡でも矯正が難しい
といった症状が出やすくなります。
主な原因
* 角膜の外傷や傷
* 角膜炎などの炎症
* 角膜疾患(円錐角膜・翼状片など)
* 白内障による水晶体の変化
👉 ICL手術では、**不正乱視は矯正対象外**となるため、
当院では術前に詳しく検査を行い、適応を慎重に判断しています。
当院の精密な術前検査
## 当院の精密な術前検査
乱視の種類と状態を正確に把握するため、当院では以下の先進機器を使用しています。
* 前眼部OCT(CASIA)
* VERION イメージガイドシステム
* ウェーブフロントアナライザー
これにより、正乱視か不正乱視か/どの程度の乱視かを多角的に評価し手術の切開部や眼内コンタクト発注、眼内コンタクトの固定位置まで計画します。
切開位置まで考えた乱視対策
まず初めに手術によって「新たに生じる可能性のある乱視を惹起乱視(じゃっきらんし)と言います。
ICL(眼内コンタクト)手術では、レンズを挿入するために約3mmの非常に小さな切開(キズ)を作ります。
このキズは自然に治りますが、治癒の過程で角膜の形がわずかに変化し、ごく軽度の乱視が生じるます。3.2mm切開で約0.2~0.3D程度の乱視変化が起こり得るとされています。
ICL(眼内コンタクト)適応となる若い方では、もともと直乱視(上下方向の乱視)が多い傾向があります。
そのため一般的な耳側(横)切開では、直乱視がやや強まる可能性があります。
当院の工夫として
直乱視の方**→ 上方角膜切開を選択し、直乱視を軽減
斜乱視・倒乱視の方→ 乱視を弱める切開位置を弱める切開位置を選択
→ 必要に応じて上結膜強膜切開(白目からの切開:角膜の惹起乱視を作らないようにする)+LRI(角膜輪部減張切開)を併用し術後の見え方の質を高める工夫を行っています。
垂直固定は眼内コンタクトが安定しやすい
乱視用ICL(眼内コンタクト)は正しい角度で安定していることが極めて重要です。
一般に、
* 1°の回転で約3%
* 30°で理論上ほぼ矯正効果が失われる**
とされています。
◇なぜ当院では「垂直固定」を採用しているのか◇
眼の中の構造を詳しく調べると、レンズを支える溝(STS距離)は、水平方向より垂直方向の方が平均で約0.3mm長いことが分かっています。
👉 そのため、
* 垂直方向にやや大きめのレンズを入れる
* レンズが回転しにくく、安定しやすい
という利点があります。
実際の報告でも、
* 軸修正が必要だった症例は約3~4%
* そのうち94%程度が水平固定
* 垂直固定では修正率3%程度を非常に低い
とされています。
VERIONによる高精度な軸合わせ
当院では、
* VERION イメージガイドシステムを使用し
* 手術中に1度単位で正確な軸合わせ*を行います
さらに、
* できるだけ安定しやすいサイズのICL(眼内コンタクト)を選択(大きさ、乱視をできるだけ垂直固定できるレンズ)・注文することで、回転リスクを最小限に抑えています。
乱視用ICL(眼内コンタクト)の安心保証制度
乱視用ICLの軸ずれに対して3年間の無償手術保証を設けています。
ただし、再手術が必要となるケースは0.5%未満であり、できる限り再手術を避けるための対策を徹底しています。